ア ド ベ ン ト

司祭 パウロ 上原信幸

先日、テレビで興味深い食材の調理方法が紹介されていました。
それは生きている食材を調理する前に、ある刺激を与えると、有益な成分が増えるというものでした。
例えば、しじみを冷蔵庫に入れておくと肝臓によい成分が増えるとか、白菜をたたくと抗ガン物質が倍増するといったものでした。
その番組で紹介された食品は、翌日店頭から品切れになることも多いという噂のある番組ですから、既に実践されている方もいらっしゃるかもしれません。
 数分見ただけなので、詳しくは判らないのですが、生物を快適ではない環境に一定時間おいてやると、生体防御反応によって、有効成分を作り出し、その環境に耐えようとするので、そういった作用を利用して、人間にも恩恵にあやかろうというものです。

 備える
今年最後に冷房が入った日から、初めて暖房が入った日まで、半月ほどしかなかったように思います。
 気象のせいですごしやすい季節が短くなったのかとしばしば話題にもなりました。いずれにせよスイッチひとつで冷房、暖房の切り替えができるようになり、あっという間に快適な室温へと調節してくれます。
 しかし、それがまた人間の忍耐力を低下させ、ますますちょうど良いと感じる季節を短くしているのでしょう。
以前は暖房をつけてから暖まるまでに時間がかかり、ストーブや火鉢に手をかざしながら時を過ごしました。
 それ以前は、薪を割り、小枝や枯葉を集めておかなくては、或いは炭を焼いて
おかなくては冬を乗り越えることが出来なかったわけですから、準備をする時間も随分かかったはずです。
しかし、冬支度を行う間に、心の準備も進んでゆきました。

 待 つ
 アドベントとは「待つ」に由来する言葉ですが、待つということは、何かが欠けた状態であるからこそ、満たされるのを待つわけです。その満たされない時間というのは、無い方が良い時間というものではなく、大切な役割を果たす時であると聖書は記しています。
試練というものは、しばしば金の精錬に例えて説明されています。金が溶けきる程の熱で充分に熱せられることによってこそ、不純物が取り除かれて、すばらしい金になると。
 聖パウロは「わたしたちは知っているのです、苦難は忍耐を、忍耐は練達を、練達は希望を生むということを。希望はわたしたちを欺くことがありません。」と語っていますが、この欠けた状態が続く時を、様々な有益なものを生み出す時として位置づけているわけです。
 世の中は、クリスマスに向けて、「満たされた快適な時への演出」をおこない、
何を買い、何を持ち、何を貯めるかに心をくばりますが、
私達はむしろ、満たされず欠けた時、救い主を待たなくてはならない時を自覚して過ごしたいと思います。 


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