地の続く限り

司祭 パウロ 上原信幸

 聖霊降臨日の祭壇のお花のために、麦の穂を頂きました。
 主のご復活の時となった過越祭は麦の刈入れの始まりの季節で、ペンテコステはイスラエルの収穫感謝祭でした。まさに大地の恵みを享受する時期に教会は産声をあげたわけです。
 以前6月に沖縄・九州・神戸3教区合同の教役者会が九州であった折、自由時間に大学時代の友人を訪ねて佐賀の町に立ち寄りました。
 郊外に立ち上る煙を見て、佐賀の主要産業を尋ねると、「農業だよ。麦刈りが終わって、藁を燃やして田植えの準備に入るわけだ。」との答えが返ってきました。神戸近辺では冬の間の麦作をあまり見なくなっていましたが、日本でも初夏が収穫の季節であることを、改めて認識しました。

    この世の移り変わり

 農耕地では、灰が肥料にもなるし、副産物をいちいち市が焼却していては大変なので、野焼きが許されていますが、市街地ではとんでもないことです。 しかし、十数年前までは、ゴミの減量のため、家庭で焼却することが推奨されている地域もありました。
 以前はドラム缶焼却炉を自治体が廉価で提供してくれる地域もありましたが、低温で焼却することによって発生するダイオキシンの問題が判り、あっという間に禁止されました。美徳として奨励されていたことが、犯罪的な行為へと変わったわけです。

    聖公会の姿勢

 5月末に行われた日本聖公会の総会で、2つの声明が採択されました。
 一つは「原発のない世界を求めて」
 昨年の3月11日まで、原子力発電は二酸化炭素を排出しないクリーンなエネルギーだとされてきましたが、実際にはまだ人間で制御することが難しい危険なものであることが判りました。廃棄物も安全に処理することができず、未処理のまま次の世代に残すことになります。
 「より多くの電力を消費することで、私たちは、快適で文化的な生活を享受してきました。しかし、東日本大震災は、原子力の平和利用を標榜した原子力発電の安全神話を粉々に打ち砕きました。今後は、原子力に依存するエネルギー政策の転換と、私たちのライフスタイルの転換が強く求められています。(2012年3月11日主教会メッセージ)」
 もう一つの採択された宣言は、「日本聖公会ハラスメント防止宣言」です。
 「すべての人は、神の似姿として命を与えられたかけがえのない存在です。その一人ひとりの尊厳は、誰からも侵害されたり傷つけられたりすることがあってはなりません。日本聖公会は、人の尊厳を侵害したり傷つけたりするあらゆるハラスメントを許さず、その防止に取り組むことを宣言します。」これがその宣言文です。
 移り変わりの多いこの世ですが、神様の似姿を宿す人間の尊厳を常に保っていくこと、これが私たちに与えられた使命です。

 「地の続く限り、種蒔きも刈入れも、寒さも暑さも、夏も冬も昼も夜も、やむことはない。 あなたたちの血が流された場合、わたしは賠償を要求する。 人は神にかたどって造られたからだ。あなたたちは産めよ、増えよ、地に群がり地に満ちよ」
 創世記8章9章


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