思いをつくして

司祭 パウロ 上原信幸

 イエス様が律法の専門家に「律法の中で、どのおきてが一番重要でしょうか」という質問を受けます。それに対してイエス様は、「『心を尽くし、精神を尽くし、思いを尽くして、あなたの神である主を愛しなさい。』これが最も重要な第一の掟である。第二も、これと同じように重要である。『隣人を自分のように愛しなさい。』律法全体と預言者は、この二つの掟に基づいている。」と言われました。
 創世記の、人間にかかわる物語を振り返ってみると、まず、アダムとエバの物語で、蛇にそそのかされた人間が、神様を裏切る物語から始まります。そしてカインとアベルの兄弟殺しの話が2番目です。
 つまり、人間というものは、その根本において神様を大切にしないし、人間同士も大切にしあわないということが、創世記に記されていることなのです。「おきて」とは、まったく反対です。

  社会事業の日

  愛するということは、心を尽くし、精神を尽くし、思いを尽くさなければ、できないことであるということです。なんとなく、愛して、自然とそんな心がわいてきて・・・愛するということは、そんなことではありえないということです。
 毎年10月末に社会事業を覚える主日がありますが、その日の特祷では、わたしたちにも、隣り人の「しもべ」となる「心」を、お与えくださいと祈ります。しかし、そのような心が本当に自分の中にあるのだろうかと思います。
 もし、わたしが祈るとすれば、「どうか、周りの人が良い人になって、私を助けてくれるようにしてください。私が毎日、不愉快な思いをせず、困った時には助けてもらい、ミスしたときには、寛容な心で、笑って許してもらえるような、そんな広い心を、他の人が持ってくれますように」そして、「世界中の人達が仲良く争わず、陰口を言い合うこともなく、なごやかに過ごすことができますように」そのような祈りをするのではないかと思います。
 そして、私達が真剣に祈れば、神様は聞いてくださるでしょう。「わかった。そんなやさしい社会を、この世の中に実現してあげよう。」 そして、こうおっしゃると思うのです。「私はあなたの祈りを聞いた。すばらしい世の中を作り出すために、使者をこの世に送り出す。その者がそのような社会を、必ず築く。」
 そして、こう続けられるように思います。「そのための使者は、それは、あなただ。」「わたしはそのような世の中を、この世にもたらすために、他のだれでもない、あなたを用いたいのだ」と私たちに語ってくださるのです。

  収穫の秋

  イエス様のみ言葉に、「わたしはぶどうの木、あなたがたはその枝である」というものがあります。まさに、キリストの枝である私たちに、愛の実がみのるということです。
 他人を自分のように大切にしない世の中だからこそ、「隣人を自分のように愛しなさい。と教えるのだ。その様な世界だからこそ、そのための働き手としてあなたたちを遣わすのだ。そしてそれが実現するのだ」
 そのような神様の約束を信じて日々を過ごすことができればと思います。


2013 the Cathedral Church of St.Michael diocese of kobe nippon sei ko kai