永遠のみ言葉

司祭 ヨハネ 芳我秀一

 今年も降臨節を迎えました。降臨節はイエス様の誕生と再臨を待ち望む季節で、教会では古くから紫の式服を用いて「反省」と「祈り」に務め、自分の生き方を見直し、クリスマスを迎える心の準備をする期間として守り続けてきました。

  〈聖書協会の創設〉 
  降臨節の第二日曜日は昔から「聖書の日曜日(Bible Sunday)」と呼ばれ、特に聖書の印刷と普及に努めている聖書協会などの働きをおぼえて祈り、また献金を捧げることになっています。 聖書協会は1804年にロンドンに創設され、その後、世界136ヵ国に聖書協会が設立されました。日本では文明開化したばかりの1876年(明治9年)に英国、米国及びスコットランドの聖書協会の支援によって日本聖書協会が設立され聖書普及の土台が築かれました。
  ところで英国聖書協会の設立にはウエールズに住む一人の少女が関わっていました。名前はメアリ・ジョーンズ(Mary Jones)。当時は理性の時代と呼ばれ、一部の知識階級の人々は満足していましたが、大多数の人びとは字も読めない状態でした。特にウエールズは炭鉱が多く貧しい地域でメアリも教育を受けられませんでした。しかし、メアリと家族は主日礼拝には必ず出席し、彼女は牧師の読んでくれる聖書の物語を一生懸命暗記したり、また牧師が読み書きを教えてくれるというので毎日休まずに習いに出かけました。やがて聖書を読めるようになったメアリは聖書が欲しくなり、数年間もお小遣いを節約して40qも離れた聖書を売ってくれると聞いた別の町にある教会に出かけたのですが既に売れ切れていました。メアリのあまりの落胆ぶりにその教会の牧師さんは心を動かされ、自分の聖書を与え誰でも安い値段でいつでも聖書を買えるようにするための運動を始めました。その運動が実って設立されたのが聖書協会でした。現在、聖書は世界中で約2400の言語に翻訳され、約2千8百万冊が聖書協会から出版されています。 このように聖書には一人の少女にあれほどの熱意を起こさせ、また聖書協会を生み出すほどの計り知れない力が秘められているということです。果たして私たちは神のみ言葉である聖書に日々どれだけ読み親しんでいるでしょうか。 
        『草は枯れ、花はしぼむが、わたしたちの神の言葉はとこしえに立つ。』(イザヤ書第40章8節)

  〈変わらない神の愛〉
  現在、いじめによる子どもたちの自殺が大きな社会問題になっています。暴力や集団的な嫌がらせにあっても、親に迷惑をかけまいとして自分一人でその苦しみを背負い込んで死を選択しているのです。つまり誰も助けに入っていない現実があるということです。誰かが勇気を持って、いじめられている子どものそばで支えてくれるならば、どれほどその子にとっては心強く感じることでしょうか。子どもたちばかりでなく大人も毎年大勢の人々が自ら命を絶っています。人間は誰しもが孤独を感じているのです。だから、神は一人で悩み苦しむ人間の姿をご覧になり独り子イエス様をこの世にお遣わしになり、人はひとりぼっちではないことを示されたのです。人間の愛は一時的で移り変わるものですが、神は永遠に変わることなく温かいまなざしを私たちに注いで下さっているということです。そして、私たちもひとりぼっちで悩み苦しむ人のよき友となることを神は願っておられるのです。


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