現在、英国ではランベス会議(7/16-8/3)が開催中である。これは全世界の聖公会の主教さんたちが10年に一度集まって開催される会議で、初めロンドンのランベス宮殿で開催されたところからこの名前が付けられている。しかし現在は約800名の主教が参加するためカンタベリーにあるケント大学を会場に開催されている。
〈ランベス会議とは〉
ところで聖公会の本家である英国教会は英国の中のイングランドという小さな国の教会であった。ところが16世紀以降、英国が海外に進出して植民地を拡大するとそこで働く自国民の牧会と植民地の人々への伝道のために教会も海外に進出することになり、19世紀には世界的規模の教会になってしまった。そうなると文化や生活習慣の違う様々の聖公会が生まれ、聖公会とはどのような教会なのか、寄って立つ根拠を確認する必要が生じてきた。そのため1867年に78名の主教が集まって第1回会議が開催されたのである。そして1888年に開催された第3回会議では教会存立の基礎として「旧新約聖書」「信経(使徒信経とニケヤ信経)」「洗礼と聖餐のサクラメント」「歴史的主教制度」の四つが提唱され、今日でもこれらはランベス四綱領(日本聖公会では聖公会綱憲)と呼ばれて全聖公会で遵守されている。その後、ランベス会議はその時代時代に聖公会が直面する問題について協議し決議を行ってきた。これは各国聖公会に対して拘束力は持たないが聖公会の最高権威を持つ決議として尊重されている。
〈ドナティスト論争〉
さて今回の会議の中心テーマは同性愛者の主教按手と結婚式に賛成するグループと反対するグループが激しく対立する中で如何に聖公会の一致を保つのか。このような教会を分裂の危機に陥れる問題は昔から存在した。 西暦300年頃、北アフリカを中心とした教会で、教会を二分する大論争がローマ皇帝ディオクレティアヌスが行った教会迫害の結果として起こった。この迫害によってある人たちは逃げて教会を離れてしまった。しかし、ある人たちは迫害に耐えて教会に踏みとどまった。やがて、迫害の時代が終わり、逃げていた人々が再び教会に帰ってきた。この時、迫害に耐えたグループの中心人物だったドナティスは裏切った連中を絶対に赦すことが出来ず、裏切った連中の仲間の主教によって按手されていた北アフリカのカルタゴの主教を無効として追放し、後任に仲間を選出して主教にしてしまったのである。しかし教会はこの混乱を収拾するために主教たちの会議を開いて協議した結果、逃げた主教によって按手された主教按手は有効であると認めたのである。しかしドナティスと仲間たちはこれに従わなかったために教会は彼らを異端として教会から追放してしまった。
〈一致を妨げるもの〉
イエス様は毒麦の譬えの中で次のように言われた。『いや、毒麦を集めるとき、麦まで一緒に抜くかもしれない。刈り入れまで、両方とも育つままにしておきなさい。刈り入れの時、「まず毒麦を集め、焼くために束にし、麦の方は集めて倉に入れなさい」と刈り取る者に言いつけよう。』と(マタイ伝第13章29,30節)。 結局、自分は絶対に正しいという思いこみが毒麦の正体である。だから人は自分の知恵や物差しで相手を判断して裁いてはいけないということである。現代における分裂の危機に於いて、果たしてどのような解決策が与えられるであろうか。
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