1月6日の顕現日を迎え、教会は顕現節に入りました。顕現節は異邦人である東方の博士たちが星に導かれてイエス様に見えたように、人種や民族を越えて全ての人々に救い主が現われたことを祝う季節です。ですから今日のわたしたちは神の子イエス様の誕生を喜びをもってお祝いしますが、しかし、二千年前の現実は全く違っていました。
〈歪んだ世界〉
当時のユダヤを支配していたヘロデ大王は、東方の博士たちから、もう一人のユダヤ人の王が生まれたと聞かされ、不安になってその地方にいる二歳以下の子どもたちを殺してしまったのです。ヘロデにとってもう一人の王は必要ありません。彼は自分の身を守るために、イエスを殺そうとしたのです。人間は自分を守ろうとすると、相手を思いやることが出来ません。また相手を守ろうとすると自分を守れなくなるのです。これが現実の世界であって不完全であり、歪んでいるということです。まさにヘロデ大王は私たち人間の象徴です。この不完全で歪んだ世界に、完全で偽りのない永遠なる方が介入して来られたために、現実の世界は狼狽え、排除しようとするのです。しかし、神の子イエス様の呼びかけに応え共に歩む人々は、この不完全で歪んだ世界を正しく一本筋の通ったものとするために召されています。
〈聖家族とは?〉
ところで、ヘロデ大王による幼児虐殺の危機に際して、ヨセフさんとマリアさんとイエス様は天使の勧告に従ってエジプトに逃げ、やがて天使を通してヘロデが既に死んだのでイスラエルの地に行くように再び勧告されて帰って来たのでした。彼らはイエス様を中心とする最初の家族です。教会の原型とも云うべきものです。この家族を「聖家族」と呼びますが、聖家族だからといって安全で平和に生きられるとは限りません。むしろ聖家族だからこそ生命の危険にさらされます。しかし、聖家族は苦しみや困難に出会っても決して自分たちで勝手に判断して行動はしません。先ず神のみ言葉に耳を傾け、祈りをもって真正面から困難に立ち向かっていく家族です。だから、人生の中で苦しみや困難に出会う時、あなたはどのように立ち向かっていくのですか、と聖家族は私たちに問いかけてくるのです。彼らは神のみ言葉に従ってエジプトへ旅立ち、再びみ言葉に従ってイスラエルの地に帰って来ました。人間にとってこの世界に安住の地はどこにもありません。人間はいつも浮き草のような孤独な者ですから、神の導きに従って仲間と助け合いながら旅をする聖なる家族を求めるのです。
〈現代の聖家族〉
スペインのバルセロナにはサグラダ・ファミリア(聖家族教会)と呼ばれる建築途中の教会があります。19世紀の終わり頃に建築家ガウディの設計によって建築を開始。この教会は18本の尖塔を建てるそうですが現在はまだ8本しか出来上がっていません。ガウディは詳細な設計図を残していないために各時代の建築家は彼の設計構想を推測しながら建築を継続してきたと言われています。多くの建築家を引きつける不思議な力をこの教会は持っています。予測では23世紀中頃に完成するそうですが、まだ見ぬ完成したサグラダ・ファミリアを求めて建築家たちは現在も努力し続けています。
わたしたちの教会もキリストに養われる聖家族としてまだ見ぬ永遠の御国に向かってご一緒に旅を続けて参りましょう。
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